2025.12.19
【2025年12月】業種別平均年収ランキング|トップは海運業1,052万円、業種別分析から見る3つの要因
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当社が保有する企業情報データベースeolより、2025年11月末時点の上場企業における平均年収データを抽出し、業種ランキング表としてまとめたものです。

全33業種平均年収分析 ー 平均714万円に対し海運業が1.47倍と突出
上場企業の有価証券報告書より全社の平均年収を業種別に分析したところ、全33業種の業種別平均年収の単純平均は714万円となりました。業種別では「海運業(1,052万円、企業数11社)」が最も高く、全業種中で唯一1,000万円を超える水準となっています。
業種別平均年収の上位には、「証券、商品先物取引業」(974万円、企業数37社)、「保険業」(874万円、企業数14社)といった金融関連業種が並び、全業種平均(714万円)を大きく上回る水準となっています。また、「鉱業」(858万円、企業数5社)、「医薬品」(841万円、企業数80社)、「石油・石炭製品」(822万円、企業数8社)なども平均を100万円以上上回る高水準を記録しており、高度な専門知識や資格が求められる業種が上位に位置していると推察されます。
企業数と上場市場の分布を見ると、業種による特徴的な傾向が見られます。最も企業数が多い業種は「情報・通信業」の613社(業種平均674万円)で、次いで「サービス業」552社(業種平均607万円)、「小売業」339社(業種平均553万円)となっています。これらの業種は企業数が多く、東証プライム、東証スタンダード、東証グロースと多様な市場に上場している企業が混在しており、上場市場の違いが業種内での平均年収の分布に影響している可能性が考えられます。
一方、企業数が少ない業種では、「鉱業」5社や「海運業」11社が高水準を記録しており、これらの業種では主要企業の多くが東証プライムに上場していることが確認できます。業種別平均年収の上位業種ほど、東証プライムに上場している企業の割合が高い傾向が見られると推察されます。
平均年収に影響する3つの要因 - 専門性・ビジネスモデル・上場市場
業種ごとに分析すると、業種別平均年収の水準には、求められる専門性、事業展開のビジネスモデル、上場市場など、複数の要因が複合的に作用していることが見えてきます。これらの要因を個別に分析することで、各業種の給与水準の特性がより明確に理解できると推察されます。
◆要因1 - 専門性と資格要件の高さ
「海運業」(1,052万円、企業数11社)、「証券、商品先物取引業」(974万円、企業数37社)、「保険業」(874万円、企業数14社)など上位業種は、いずれも高度な専門知識や資格(海技士、ファイナンシャルプランナー等)が求められる業種です。これらの業種では、従業員の専門性に対する評価が給与に直結している可能性が高いと推察されます。海運業の平均年収は、全33業種の業種別平均年収の単純平均(714万円)の約1.5倍という水準です。
また、「鉱業」(858万円、企業数5社)は平均の約1.2倍、「医薬品」(841万円、企業数80社)は平均の約1.2倍となっており、専門性の高さが給与水準に反映されています。医薬品業界は、研究開発に多額の投資を行う業種で、専門的な研究者や開発担当者を多数雇用する業種特性が、高い平均年収につながっていると考えられます。
◆要因2 - ビジネスモデルによる給与水準への影響
海運業、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガス業は、事業の中核が大規模な設備投資にあり、一般には「資本集約型産業」と呼ばれる特性を持っています。船舶、精製設備、鉱山施設、発電所といった高額な固定資産を少数精鋭の従業員で効率的に運用することで、高い付加価値を生み出すビジネスモデルが特徴です。こうした産業では、1人あたりの生産性が高く、その結果として給与水準も高くなる傾向が見られます。
建設業(771万円、企業数160社)、不動産業(747万円、企業数139社)、銀行業(756万円、企業数82社)なども、平均(714万円)を上回る水準となっており、資本集約的なビジネスモデルが高い給与水準につながっていることが考えられます。
一方、サービス業や小売業などの「労働集約型産業」は、人手による労働がビジネスの中核となります。一般的に1人あたりの付加価値生産性が資本集約型産業より低くなるため、給与水準も相対的に低くなり、サービス業(607万円、企業数552社)、その他製品(604万円、企業数108社)、水産・農林業(597万円、企業数12社)など、業種平均714万円を下回る水準となっています。ただし、労働集約型産業においても、高度な専門性やスキルを要する職種(例:コンサルティングサービスの専門職、高度なサービス提供を行う管理職など)を多数抱える企業は、当該業種の業種平均を上回る給与水準を実現している可能性があると推察されます。
◆要因3 - 上場市場と企業規模などによる給与水準の違い
上場市場別に見ると、業種別平均年収の上位業種では、東証プライムに上場している大手企業が業種全体の平均を引き上げている傾向が見られます。例えば、海運業11社の業種内TOP3企業は、いずれも東証プライムに上場しており、これら3社の平均年収は約1,387万円と、業種平均1,052万円を大きく上回っています。このように、一部の大手企業が業種全体の平均を引き上げていると考えられます。
一方、証券、商品先物取引業37社では、東証プライムに上場している企業に加え、東証スタンダードや東証グロースに上場している企業も含まれており、多様な上場市場の企業が混在しています。この業種では、業種内TOP1位のインテグラル㈱(2,578万円、東証グロース)が業種平均974万円の2倍以上の水準を記録しており、上場市場よりも業務特性と報酬体系が給与水準に大きく影響していることが推察されます。
業種別の平均年収には大きな幅があり、この多様性は、上場市場の違いのみではなく、ビジネスモデル、専門性、企業規模といった複数の要因が複合的に作用した結果です。同じ業種内でも、企業規模、経営戦略、人材投資の方針により、平均年収は異なってくることが推察されます。
業種別平均年収トップ3業種の企業分析 - 海運・証券・保険業の特徴
業種別の傾向に加えて、業種内の企業別分析を行うことで、給与水準に影響する複数の要因がより明確になります。
【1位】 海運業(業種平均1,052万円) ― 資本集約型のビジネスモデルと高度な専門性
海運業の業種内TOP3は、1位:㈱商船三井(1,437万円、東証プライム)、2位:日本郵船㈱(1,435万円、東証プライム)、3位:飯野海運㈱(1,287万円、東証プライム)となっています。3社とも東証プライムに上場している大手外航海運企業で、船舶運航に必要な高度な専門性が平均年収に反映されていることが推察されます。船舶という高額な固定資産を少数精鋭で効率的に運用する資本集約型のビジネスモデルが、1人あたりの生産性を高め、給与水準を押し上げています。
【2位】 証券、商品先物取引業(業種平均974万円) ― 業務特性と報酬体系による給与水準の違い
証券業の業種内TOP3は、1位:インテグラル㈱(2,578万円、東証グロース)、2位:㈱マーキュリアホールディングス(1,801万円、東証プライム)、3位:㈱大和証券グループ本社(1,626万円、東証プライム)となっています。1位のインテグラル㈱は東証グロースに上場している企業で、業種平均の2倍以上の平均年収を記録しています。同社はプライベート・エクイティ投資を主業とする独立系投資会社で、高度な金融専門性と成果報酬型の報酬体系が、この水準を支えていると推察されます。一方、東証プライムに上場している大手企業も高い水準を維持しており、東証グロース上場企業であるインテグラル㈱が突出した水準を記録していることから、この業種では上場市場よりも業務特性と報酬体系が給与水準に影響を与えている可能性があると推察されます。
【3位】 保険業(業種平均874万円) ― 経営規模とグローバル展開で高い給与水準を実現
保険業の業種内TOP3は、1位:東京海上ホールディングス㈱(1,536万円、東証プライム)、2位:SOMPOホールディングス㈱(1,218万円、東証プライム)、3位:MS&ADインシュアランスグループホールディングス㈱(1,144万円、東証プライム)となっています。3社とも東証プライムに上場している企業で、業種平均を大きく上回る平均年収を実現しています。高度な金融知識とリスク管理能力、そしてグローバル展開による経営規模が、人材投資を促進し、給与水準を押し上げる形となり、専門性の高さと経営規模が給与水準に大きく影響していることが推察されます。
様々な場面で活用する平均年収データ
業種別平均年収のデータは、就職・転職活動、企業分析、業界研究など、様々な場面で活用できます。
◆就職・転職活動での活用
志望業界の給与水準を把握することで、自身のキャリアプランや生活設計を具体化できます。ただし、平均年収はあくまで全体の傾向を示すものであり、企業規模、勤続年数、職種、地域、そして上場市場などによって実際の給与は大きく異なることに留意が必要です。業種別の平均年収と、業種内の企業別TOP3を比較することで、業種内での平均年収の分布状況も把握できます。例えば、海運業の場合、業種平均1,052万円に対して、業種内TOP1位の商船三井は1,437万円と、約1.4倍の水準となっています。また、上場市場による違いも考慮すべき点です。東証プライムに上場している企業と東証グロース・東証スタンダードに上場している企業では、給与水準に差がある場合があります。
◆企業分析や投資判断での活用
平均年収データを企業の収益力や人材戦略を評価する材料として活用できます。平均年収が業種平均を大きく上回る企業は、優秀な人材の確保・定着に積極的であり、長期的な競争力を持つ可能性があります。一方、平均年収の高さだけでなく、売上高や利益に対する人件費の比率(労働分配率)が適正であるかも重要な確認ポイントです。収益性が低いにもかかわらず高い平均年収を維持している企業は、将来的に人件費の見直しが検討される可能性も考えられます。また、資本集約型産業では少数精鋭で高付加価値を生み出すビジネスモデルが一般的であり、平均年収が高いことは合理的です。一方、労働集約型産業に分類される業種において、業種平均を大幅に上回る平均年収を実現している企業は、独自の高付加価値サービスや専門性の高い業務を展開している可能性が考えられます。
◆業界研究での活用
業種別の給与水準の違いを理解することで、各業種のビジネスモデルや収益構造の特徴を把握できます。資本集約型産業と労働集約型産業の違い、専門性の高さが給与に与える影響、上場市場による違いなど、業種ごとの特性を多角的に理解する手がかりとなります。
有価証券報告書に記載される平均年収は、正社員を対象とした数値であり、企業の人材戦略や収益性を反映していると考えられる重要な指標です。業種別・企業別の平均年収データを丁寧に分析することで、自身のキャリア選択や企業評価に活かすことができるでしょう。
データのご案内
本記事の分析に使用した平均年収データの一部を当社ウェブサイトからダウンロードいただけます。このデータには、「業種別の平均年収、TOP3業種内のランキング」が含まれており、企業分析や業界動向の把握にお役立ていただけます。
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本記事は、企業情報データベースeolに収録されているデータに基づく情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券等の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。投資判断は、必ずご自身の責任において行っていただくようお願いいたします。また、本記事に記載されている情報は、その正確性、完全性を保証するものではなく、投資の結果について当社は一切の責任を負いません。
2025年11月末時点の平均年収データを利用、持株会社等で平均年収を開示していない上場企業は含んでおりません。