2026.1.23
【2026年1月】業種別 営業利益 増加額ランキング|10年推移から見る日本企業の本業収益力の変化
ダウンロードページに、「業種別営業利益ランキング」を掲載しました。
当社が保有する企業情報データベースeolより、上場企業における営業利益データを抽出し、ランキング表としてまとめたものです。

日本企業を取り巻く10年間の環境変化
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益で、企業の「本業の稼ぐ力」を示す指標です。この10年間(2015年→2020年→2025年)、日本企業を取り巻く環境は大きく変化しました。
2015年時点はアベノミクス継続期で円安進行(1ドル120円前後)、2020年時点は新型コロナウイルス感染症の世界的流行とテレワーク・デジタル化の急速な進展、2025年時点は経済正常化と日銀のマイナス金利政策解除(2024年3月)、円安基調の継続(1ドル140〜150円台)という大きな転換点がありました。
業種別営業利益合計額と1社あたり平均営業利益
2015年から2025年の10年間で業種全体での営業利益合計額は:3兆9,092億円の増加、1社あたりの平均営業利益は101億円増加しました。業界全体の規模拡大とともに、企業単体の収益力も向上したことが推察されます。営業利益合計額の10年間増加額上位3業種を、業界規模と企業単体の収益力の両面から分析します。
第1位:輸送用機器 10年間増加額5兆6,666億円(伸び率82.3%)
営業利益合計額は2015年の6兆8,884億円から2025年の12兆5,550億円へと大幅に増加し、日本を代表する基幹産業の収益力向上を示しています。1社あたり平均営業利益も741億円から1,495億円へと倍増(成長率101.8%)しており、業界全体の回復力の強さが伺えます。2025年の業種内営業利益上位3社はトヨタ自動車が7兆7,441億円、本田技研工業が1兆2,135億円、スズキが6,429億円となっており、特にトヨタ自動車は2015年の2兆7,506億円から2025年には約2.8倍の7兆7,441億円へと右肩上がりの成長を遂げています。ハイブリッド車・電動車への事業転換、海外市場での販売拡大、そして生産効率化による利益率向上が、この成長を支えたと考えられます。
第2位:電気機器 10年間増加額4兆2,957億円(成長率83.5%)
営業利益合計額は2015年の5兆1,424億円から2025年の9兆4,381億円へと拡大しました。1社あたり平均営業利益は197億円から425億円へと2.2倍(成長率115.8%)に増加し、個別企業の収益力も大幅に向上しています。2025年の業種内営業利益上位3社はソニーグループが1兆4,057億円、日立製作所が8,782億円、東京エレクトロンが6,973億円となっています。特にソニーグループは2015年の646億円から2025年の1兆4,057億円と約21.8倍の急激な成長を遂げており、エンターテインメント事業とイメージセンサー事業が継続的に収益を牽引しています。デジタル化・映像化の世界的需要の拡大が業種全体の成長を支えたことが推察されます。
第3位:情報・通信業 10年間増加額2兆6,264億円(成長率54.7%)
営業利益合計額は2015年の4兆8,036億円から2025年の7兆4,300億円へと増加しました。上位3業種の中では相対的に低い成長率ですが、企業数も多く、全体的にバランスの取れた成長を遂げています。ただし1社あたり平均営業利益は163億円から154億円へと微減(成長率▲5.5%)しており、業界全体の拡大と個別企業の収益性には差異が見られます。2025年の業種内営業利益上位3社は日本電信電話㈱が1兆7,913億円、KDDI㈱が1兆911億円、ソフトバンク㈱が9,890億円となっています。テレワーク需要の拡大、クラウドサービスの普及、そしてDX投資の継続的な増加が、業界全体の営業利益を底支えしたと考えられます。
【注目業種】高成長を遂げた3業種の分析
営業利益合計額の増加額上位3業種以外で、特筆すべき業種の動向を紹介します。
海運業:全業種中最も高い成長率381.7%
1社あたりの平均営業利益で2015年の99億円から2025年の475億円へと4.8倍に増加し、全業種中最も高い成長率381.7%を記録しました。営業利益合計額も1,478億円から5,221億円へと3.5倍(成長率253.3%)に拡大しています。業種内上位3社は日本郵船が2,108億円、商船三井が1,509億円、川崎汽船が1,029億円となっており、特に商船三井は2015年の172億円から2025年には1,509億円へと約8.7倍(成長率774.6%)の驚異的な成長を遂げています。
2020年のコロナ禍では業種全体の営業利益合計が882億円まで落ち込み(2015年比▲40.3%)、日本郵船も387億円(2015年比▲41.5%)と大幅に減少しました。しかし2021年以降、世界的なコンテナ不足と運賃高騰により急速に回復し、2025年には業界全体がコロナ前を大きく上回る収益水準に達しています。海上物流の需要回復とサプライチェーンの正常化が業界全体の収益を押し上げたことが推察されます。
保険業:堅調な拡大で成長率149.7%
営業利益合計額で2015年の1兆5,465億円から2025年の3兆8,615億円へと2.5倍(成長率149.7%)に増加しました。1社あたり平均営業利益も1,406億円から2,970億円へと倍増(成長率111.3%)しており、業界規模・企業単体の両面で堅調な成長を遂げています。
業種内上位3社の成長は特に顕著で、東京海上ホールディングスは2015年の3,582億円から2025年の1兆4,600億円へと約4.1倍(成長率307.6%)、MS&ADインシュアランスグループホールディングスは2,871億円から9,290億円へと約3.2倍(成長率223.6%)の拡大を達成しています。2020年のコロナ禍でも業種全体の営業利益合計は1兆4,644億円(2015年比▲5.3%)とわずかに減少しましたが、2025年には大きく回復し、10年間で大幅な成長を遂げた業種と言えます。大手保険グループの海外事業拡大と保険料収入の増加が、業種平均を押し上げたことが推察されます。
石油・石炭製品業:赤字から黒字への転換
2015年の▲4,569億円の営業赤字から2025年には3,877億円の黒字に転換し、約8,447億円の改善を遂げています。1社あたり平均営業利益も2015年の▲415億円から2025年の431億円へと転換しました。
2020年時点でも△1,027億円と依然として赤字が継続していましたが、2021年以降の資源価格上昇と円安基調により、業界全体が黒字化に成功しています。業種内企業では、ENEOSホールディングスが2015年の△1,615億円から2025年には2,415億円へ、出光興産が2015年の△850億円から2025年には795億円へと大幅な改善を遂げています。資源価格の上昇と円安による追い風に加え、事業再編や設備効率化などの構造改革が業界全体の収益性向上に寄与したと考えられます。
営業利益データの実務的活用
10年という長期スパンで動向を追うことで、日本経済における産業構造の変化、各業種の成長性と課題、外部環境変化への適応力を多面的に理解でき、さまざまな立場から実務的な活用が考えられます。
◆経営企画・事業開発部門での活用
自社の営業利益が業種平均と比較してどの水準にあるかを確認することで、競争力を客観的に評価できます。また取引先企業の属する業種の営業利益動向を把握することで、成長業種の顧客には積極的な提案、停滞業種の顧客には慎重な与信管理といった営業戦略に活用できると推察されます。
◆企業分析や投資判断での活用
10年間で一貫して営業利益が増加している業種は長期投資に適している可能性があります。海運業の381.7%という驚異的伸び率や、輸送用機器・電気機器の安定成長は、長期投資における業種選択の重要な判断材料となります。
◆就職・転職活動での活用
学生や転職検討者にとっては、志望業界の長期的な営業利益トレンドを参考にすることで、将来のキャリア展開を見通すことができます。輸送用機器、電気機器、情報・通信業のように成長を示している業種では採用意欲が高く給与水準も上昇傾向にある可能性、海運業や石油・石炭製品のようにV字回復を遂げた業種では事業構造転換の中での成長機会が多い可能性が推察されます。
企業情報データベースeolで実現する効率的な企業分析
本記事の分析に使用した業種別営業利益データの一部を当社ウェブサイトからダウンロードいただけます。このデータには、「業種別の営業利益、10年間の伸び率」が含まれており、企業分析や業界動向の把握にお役立ていただけます。
当社では、このような詳細な企業データを網羅しており、企業や業界の調査・分析等にご活用いただける企業情報データベースeolをご提供しております。本記事以外のデータが必要な場合や、ご興味がございましたら、お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
本記事は、企業情報データベースeolに収録されているデータに基づく情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券等の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。投資判断は、必ずご自身の責任において行っていただくようお願いいたします。また、本記事に記載されている情報は、その正確性、完全性を保証するものではなく、投資の結果について当社は一切の責任を負いません。
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