2026.1.23
【2026年1月】東証プライム市場 配当金支払額ランキング|配当性向から見る株主還元の実態
ダウンロードページに、「配当金支払額ランキング」を掲載しました。
当社が保有する企業情報データベースeolより、東証プライム市場に上場している企業の配当金支払額を抽出し、ランキング表としてまとめたものです。

本記事で使用しているデータは当社独自の基準で算出しており、各企業が決算資料等で開示している値と異なる場合があります。
東証プライム市場における配当金支払額の全体像と業種別傾向
今回の分析対象となる東証プライム上場企業の配当金支払額合計は約19兆6,235億円、1社あたりの平均配当金支払額は約138億円となりました。配当金支払額の上位企業は、多額の利益を株主に還元している企業として注目されます。
配当金支払額の上位企業を分析すると、1位はトヨタ自動車(輸送用機器)で配当金支払額1兆2,596億円、2位はソフトバンク(情報・通信業)で5,337億円、3位は日本電信電話(情報・通信業)で4,604億円となっており、これらの企業は、安定的な事業基盤と高い収益力により、株主への手厚い利益還元を実現していると考えられます。
4位はソフトバンクグループ(情報・通信業):4,327億円、5位は本田技研工業(輸送用機器):4,150億円と続き、TOP10企業の配当金支払額の合計は約4兆7,909億円と、対象企業全体の約24.4%を占めていました。
配当金支払額TOP3企業の詳細分析
配当金支払額上位3社であるトヨタ自動車、ソフトバンク、日本電信電話について、より詳細な分析をおこなうため、親会社株主に帰属する当期純利益を用いた配当性向を算出、分析しました。配当性向は、親会社株主に帰属する当期純利益のうち、どれだけを配当金として支払っているかを示す指標と言われており、一般的に、配当性向30~50%程度が適正水準とされています。TOP3企業の配当性向を見ると、26.4%~101.4%の範囲にあり、業種や経営方針により配当政策に大きな違いがあることが推察されます。
第1位:トヨタ自動車(輸送用機器)
配当金支払額:1兆2,596億円、親会社株主に帰属する当期純利益:4兆7,651億円で、配当性向:26.4%です。
配当金支払額で圧倒的な1位となり、2位のソフトバンクの2.4倍近い規模です。配当性向26.4%は一般的な適正水準と言われている30~50%を下回っており、利益に対して配当が控えめです。これは、電動化やモビリティサービスなど将来的な事業投資を重視しながら、安定的な配当を継続する保守的な配当政策を採用していると考えられます。親会社株主に帰属する当期純利益が4兆7,651億円という高水準にあることから、仮に配当性向を30%に引き上げた場合でも約1,700億円の増配余地があり、将来的な株主還元強化の可能性があると推察されます。グローバル自動車メーカーとして、安定配当を維持しながら成長投資とのバランスを取った財務戦略を実践していることが考えられます。
第2位:ソフトバンク(情報・通信業)
配当金支払額:5,337億円、親会社株主に帰属する当期純利益:5,261億円で、配当性向:101.4%です。
配当性向が101.4%と、当期純利益を上回る配当を実施しています。これは安定配当を重視する経営方針により、一時的に利益が減少した場合でも配当金額を維持していることが推察されます。通信事業は安定的なキャッシュフローを生み出すビジネスモデルであり、営業キャッシュフローから配当を支払う余力があると考えられます。配当性向が100%を超える状態は持続性に注意が必要ですが、通信インフラという収益基盤の安定性から、配当政策を維持できる財務体質を持っていると推察されます。ただし、今後の利益成長により配当性向を適正水準に戻していく可能性も考えられます。
第3位:日本電信電話(情報・通信業)
配当金支払額:4,604億円、親会社株主に帰属する当期純利益:1兆円で、配当性向:46.0%です。
配当性向46.0%と、適正水準と言われている30~50%の範囲内にあり、利益と株主還元のバランスが取れた配当政策を実施しています。通信インフラを保有する企業として安定的な収益を生み出し、継続的な配当を支払う財務基盤を持っていると考えられます。配当金支払額は4,604億円と大規模であり、多くの株主に対する還元を重視した経営を行っており、親会社株主に帰属する当期純利益が1兆円を超える中で、配当性向を40%台に維持することで、事業投資と株主還元の両立を図っていると見られます。
配当性向の分布から見る株主還元の実態と業種別傾向
業種別の分析を行うと、各業種が異なる配当政策を採用していることが明確に表れています。配当金支払額と配当性向を組み合わせて分析することで、企業がどの程度利益を株主に還元し、どの程度を事業投資に充てるかという経営判断が見えてきます。
輸送用機器(40社、平均配当性向87.5%)
平均配当性向は87.5%と高くなっていますが、これは利益が0に近い企業や一時的な減益企業が配当を維持したことで配当性向が上昇した影響が含まれていると推察されます。一方、トヨタ自動車(配当性向26.4%)や本田技研工業(配当性向49.6%)など主要企業の配当性向は適正水準にあり、設備投資や研究開発投資とのバランスを取りながら株主還元を実施していることが考えられます。配当金支払額ではトヨタ自動車が輸送用機器全体の約46%を占めるなど、大手企業の配当金支払額が高い傾向にあります。
情報・通信業(151社、平均配当性向33.2%)
平均配当性向は33.2%と適正水準です。ただし、ソフトバンクのように配当性向が100%を超える企業もあり、個社ごとの配当政策の違いが大きいことが考えられます。上位4社(ソフトバンク、日本電信電話、ソフトバンクグループ、KDDI)の配当金支払額合計は1兆7,690億円と、情報・通信業全体(2兆4,552億円)の約72%を占め、大手企業の配当金支払額が高い傾向が推察されます。
電気機器(124社、平均配当性向39.1%)
平均配当性向は39.1%と適正水準です。半導体製造装置、電子部品、家電など多岐にわたる製品を手がけ、グローバル市場で競争しているため、研究開発投資や設備投資が継続的に必要となる業界特性があります。そのため、配当性向を適正水準に維持しながら、将来の競争力強化のための投資とのバランスを取った配当政策を実施していることが推察されます。
卸売業(122社、平均配当性向38.6%)
平均配当性向は38.6%と適正水準です。卸売業は商品の流通を担う企業から、資源開発、インフラ投資、事業投資など幅広い領域で事業を展開する総合商社まで、多様なビジネスモデルを持つ企業が含まれます。特に三菱商事(配当性向42.9%)、伊藤忠商事(配当性向32.3%)、三井物産(配当性向30.5%)などの総合商社は、配当性向を30~40%台の適正水準を維持しながら、安定的な株主還元を実施していると考えられます。
化学(116社、平均配当性向40.1%)
平均配当性向は40.1%と適正水準です。素材、機能性化学品、医薬品原料など多様な製品を手がけ、製造業の川上に位置する基幹産業です。長期的な競争力を維持するためには、プラントの維持・更新、新技術開発、環境対応などへの継続的な投資が必要となります。そのため、配当性向を適正水準に保ちながら、研究開発費や設備投資とのバランスを取った財務戦略を実践していることが推察されます。
配当政策と企業の成長戦略
配当金支払額と配当性向の関係から、企業の株主還元と成長投資のバランスが読み取れます。
配当性向が低い企業は、利益の多くを内部留保として事業投資に振り向けていることが推察されます。トヨタ自動車のように配当性向26.4%の企業は、電動化や自動運転など将来的な成長分野への投資を優先しながら、安定的な配当を維持する戦略を採用していると考えられます。このような企業は、将来的に投資が収益化した際に増配を実施する可能性があり、長期的な株主還元の拡大が期待できると推察されます。
配当性向が適正水準にある企業は、株主還元と成長投資のバランスが取れており、持続可能な配当政策を実践していることが推察されます。三菱商事(配当性向42.9%)や伊藤忠商事(配当性向32.3%)、三井物産(配当性向30.5%)などの総合商社は、配当性向を30~40%台の適正水準に維持することで、事業環境の変化に対応しながら安定的な株主還元を実施していると言えます。
配当性向が高い企業は、成熟した事業モデルを持ち、大規模な成長投資よりも株主還元を優先する方針を採用していることが推察されます。ただし、配当性向が100%を超える企業については、一時的な減益による影響か、持続的な高配当政策かを見極める必要がありますが、ソフトバンクのように通信インフラという安定的な事業基盤を持つ企業は、営業キャッシュフローが潤沢であれば、一時的に配当性向が100%を超えても配当を維持できる可能性が考えられます。
東証プライム市場における配当金支払額ランキングを分析した結果、企業の配当政策は業種特性、収益力、成長戦略により多様であることが分かります。配当金支払額と配当性向を組み合わせて分析することで、企業の株主還元姿勢と将来的な配当余地を評価できると考えられます。配当性向から投資分析や投資判断を行う際の有用な材料の一つとして活用することで、配当重視の投資戦略や企業分析の精度を高めるうえで役立つと考えられます。
企業情報データベースeolで実現する効率的な企業分析
本記事の分析に使用した東証プライム市場に上場している企業の配当金支払額データの一部を当社ウェブサイトからダウンロードいただけます。このデータには、「東証プライム市場に上場している企業の配当金支払額TOP30」が含まれており、企業分析や業界動向の把握にお役立ていただけます。
当社が提供する企業情報データベースeolでは、本記事で使用した配当金の支払額や親会社株主に帰属する当期純利益に加えて、営業活動によるキャッシュ・フローや投資活動によるキャッシュ・フローといったデータも取得可能です。これらを組み合わせることで、フリーキャッシュフロー(営業CF + 投資CF)やキャッシュフロー配当性向(配当金支払額 ÷ 営業CF × 100)といった、配当の持続可能性をより詳細に分析できる指標を算出することが可能です。本記事以外のデータが必要な場合や、ご興味がございましたら、お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
本記事は、企業情報データベースeolに収録されているデータに基づく情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券等の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。投資判断は、必ずご自身の責任において行っていただくようお願いいたします。また、本記事に記載されている情報は、その正確性、完全性を保証するものではなく、投資の結果について当社は一切の責任を負いません。
本記事の対象としている企業は東証プライム市場に上場している企業のうち、金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)を除く、連結決算企業のみで算出しております。