2026.7.10
【2026年7月】ナフサリスク記載が48.1%増加!売上原価率ランキング|今後の時系列分析への活用に
当社では、2026年6月にマクロ経済の視点からナフサを含めた国内企業物価指数の経済統計記事を公開し、市場全体における原材料価格の高騰トレンドを分析しました。今回は、そのマクロな市場動向が個別企業の経営やディスクロージャーにどのような変化をもたらしているかという「別の切り口(ミクロ視点)」から、新たな調査を実施しました。
具体的には、当社が保有する企業情報データベースeolのキーワード検索機能を活用し、2026年3月期に提出された上場企業の有価証券報告書を対象に、「事業等のリスク」項目にて原材料であるナフサの価格変動に言及している企業を抽出し一覧化いたしました。
有価証券報告書の「事業等のリスク」における「ナフサ」の記載は、原材料価格の動向が事業継続性に与える影響を企業がどれだけ重く受け止めているか、その危機意識や感応度の高さを示すものです。本レポートでは、世界的なエネルギー価格の不安定化という外部リスクに直面する中で、警戒を強めている業界・企業があるのかを検証します。
さらに、ナフサ価格変動の影響を測る「基準値(ベースライン)」として、2026年3月期時点の売上原価率を確認します。本格的な価格変動が反映される前の数値を現時点で把握しておくことで、今後の時系列分析における活用の幅を考察いたします。
有価証券報告書(2026年3月期)のリスク情報に「ナフサ」を記載する企業が48.1%増加、製造業を中心に広がる価格変動への警戒感
化学製品の基礎原料であるナフサの価格変動は、製造業の収益性に直接影響を与えます。
2026年3月期の有価証券報告書を分析したところ、リスク情報に「ナフサ」を記載する企業は前年の54社から80社へと48.1%増加しました。前年から継続記載している10業種を中心に、開示企業数がさらに増加し20業種と倍増しています。
特にエネルギー価格の影響を受けやすい業種では、調達コストの安定化が喫緊の課題となっていると考えられます。各社の開示からは、製品価格への転嫁遅れに対する懸念や安定調達への戦略的な動きが読み取れます。このように記載企業数が大幅に増加した背景には、原材料価格の変動に対する感応度や価格転嫁の体制を、投資家へより透明性を持って伝えようとする各社の姿勢が反映されていると推察されます。
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【業種別データ】有価証券報告書における「ナフサ」言及状況の業種一覧
2026年3月期決算の有価証券報告書でリスク情報に「ナフサ」記載がある上場企業を業種別に抽出し、前年度(2025年度)からの推移をまとめた全リストは以下の通りです。
| 業種名 | 25年記載社数 | 26年記載社数 |
|---|---|---|
| 化学 | 40社 | 46社 |
| 卸売業 | 1社 | 5社 |
| 石油・石炭製品 | 4社 | 4社 |
| 精密機器 | 2社 | 3社 |
| 機械 | 1社 | 3社 |
| 非鉄金属 | 1社 | 2社 |
| サービス業 | 0社 | 2社 |
| その他製品 | 1社 | 1社 |
| パルプ・紙 | 1社 | 1社 |
| 繊維製品 | 1社 | 1社 |
| 陸運業 | 1社 | 1社 |
| ガラス・土石製品 | 0社 | 1社 |
| 医薬品 | 0社 | 1社 |
| 小売業 | 0社 | 1社 |
| 情報・通信業 | 0社 | 1社 |
| 食料品 | 0社 | 1社 |
| 鉄鋼 | 0社 | 1社 |
| 電気機器 | 0社 | 1社 |
| 不動産業 | 0社 | 1社 |
| 輸送用機器 | 0社 | 1社 |
| その他(非公開企業) | 1社 | 2社 |
| 総計 | 54社 | 80社 |
これらの業種は、一見するとナフサの直接的な消費や調達との関連性が相対的に低いように見える業界も含んでいます。しかし、2026年3月期において新たに開示がなされた背景には、マクロ経済における石油化学製品や燃料価格の高騰が、サプライチェーンやパッケージ原材料、物流コスト、あるいは電気料金といった「間接的なコスト上昇」を通じて、自社の事業収益に影響を及ぼし始めている現状が垣間見えます。
従来は経営リスクとして明記していなかった業種に属する企業であっても、外部環境の急速な変化を重く受け止め、株主や投資家への透明性を高める目的から開示を拡充する動きが進んでいると考えられます。これらの業種に属する企業では、今後はマージン確保のための柔軟な価格転嫁や、コストコントロールといったリスクヘッジ策がより重要視されると考えられます。
2026年3月期データに基づくトップ業種の原価構造検証と、
今後の時系列分析への活用
上記の一覧のようにリスク開示を行う裾野が広がる一方で、依然として言及企業数が圧倒的多数(46社)を占める「化学」業種内において、特に連結売上原価率が高い上位10社を抽出し、その構造を検証しました。売上原価率は製造業における原材料比率を示す重要な指標であり、ナフサ価格変動の影響度を測る指標として活用できます。
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売上原価率が高い上位10社(化学・2026年3月期連結決算企業)
| 順位 | 社名 | 連結売上原価率 |
|---|---|---|
| 1 | 共和レザー㈱ | 83.51 |
| 2 | 新日本理化㈱ | 83.41 |
| 3 | 東京インキ㈱ | 83.35 |
| 4 | 田岡化学工業㈱ | 82.61 |
| 5 | 森六㈱ | 81.93 |
| 6 | ㈱日本触媒 | 80.73 |
| 7 | リケンテクノス㈱ | 80.50 |
| 8 | UBE㈱ | 77.62 |
| 9 | ウェーブロックホールディングス㈱ | 77.12 |
| 10 | 三井化学㈱ | 76.81 |
※上記ランキングは、事業リスクに「ナフサ」と記載されている化学業種46社のうち、2026年7月6日時点でeolデータベースに収録されている連結売上原価率より作成しております。
なお、今回用いた売上原価率は、2026年3月期有価証券報告書に基づいたデータです。現時点では、最新のナフサ価格変動の影響が損益計算書上の原価に本格的に反映される前段階である可能性も考えられます。そのため、今回のデータは現時点の収益構造を確認するだけでなく、今後提出される四半期決算短信や次期の有価証券報告書など、継続的な時系列分析における「ベースライン(基準値)」として活用いただくことが有益であると考えられます。
2026年3月期の決算データを通じて各社のスタートラインの原価構造を把握し、今後の時系列変化を追跡することで、企業の「価格交渉力」や「外部環境への適応力」をより精緻に評価できる可能性があると考えられます。
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当社が保有する企業情報データベースeolより、26年3月決算全上場企業のリスク情報キーワード検索結果および、化学業種の連結売上原価を集計し、ランキング表としてまとめたものです。
※本記事は、2026年7月6日時点の企業情報データベース「eol」より抽出した連結実績データを基に作成しています。
※本記事で使用しているデータは当社独自の基準で算出しているため、各社の公表データと異なる場合があります。
投資判断に関する注意事項
※本記事は、企業情報データベースeolに収録されているデータに基づく情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券等の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。投資判断は、必ずご自身の責任において行っていただくようお願いいたします。また、本記事に記載されている情報は、その正確性、完全性を保証するものではなく、投資の結果について当社は一切の責任を負いません。