2026.9.28
【2026年9月】人的資本指標調査|企業価値向上に寄与する人的資本経営の最前線
昨今、少子高齢化に伴う構造的な人材不足が深刻化する中、企業にとって多様な人材の確保と定着は最重要の経営課題となっています。特に、女性活躍推進やワークライフバランスの充実は、労働力確保だけでなく、多様な視点によるイノベーション創出や企業価値向上(人的資本経営)の観点から強い関心を集めています。
近年では有価証券報告書において人的資本関連情報の記載が求められるようになったことから、企業の持続的な成長性を図る指標として、投資家や求職者、研究者といった多様なステークホルダーからの注目もますます高まっています。
今回は、当社が2026年8月に更新した「人的資本パッケージ(※)」をもとに、女性活躍推進法に基づき特に優れた取り組みを行う企業として国から認定された「プラチナえるぼし」取得上場企業を抽出し、注目度が高い項目について調査を行いました。
プラチナえるぼしとは|通常の「えるぼし」との違いと取得企業の増加傾向
「プラチナえるぼし」とは、女性活躍推進法に基づく認定制度である「えるぼし認定」を取得した企業のうち、より高い水準の要件を満たした優良企業に対して厚生労働大臣が認定を行う制度です。
「えるぼし認定」は、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況などが優良な企業を認定する制度です。「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの評価項目のうち、基準を満たした項目数に応じて1段階目から3段階目までが付与されます。
一方、「プラチナえるぼし」として認定されるためには、通常のえるぼし認定を受けたうえで、策定した一般事業主行動計画の目標を達成すること、そして5つの評価項目すべてにおいて「通常のえるぼしよりも厳しい基準」を満たすことが求められます。
当社のデータ(上場企業対象)をもとに取得状況を業種別に見ると、通常の「えるぼし認定」と「プラチナえるぼし認定」で以下のような分布となっています。
「えるぼし認定」・「プラチナえるぼし認定」取得企業 業種別分布
| 業種 (東証33分類) |
えるぼし認定取得企業数 (社) |
プラチナえるぼし認定取得企業数 (社) |
|---|---|---|
| サービス業 | 87 | 4 |
| 情報・通信業 | 81 | 1 |
| 電気機器 | 48 | 1 |
| 小売業 | 35 | 2 |
| 銀行業 | 33 | 7 |
| 化学 | 22 | 1 |
| 輸送用機器 | 19 | 1 |
| その他金融業 | 7 | 1 |
通常の「えるぼし認定」が全業種で約600社に広がり、特にサービス業や情報・通信業を中心として多くの企業が取得しているのに対し、「プラチナえるぼし」を取得している上場企業はわずか18社にとどまっており、極めて高いハードルが設定されていることが分かります。当社のデータによると、上場企業におけるプラチナえるぼし認定企業数は、2025年時点の13社から、2026年時点では18社へと順調に増加しています。有価証券報告書での情報開示義務化などを背景に、投資家や求職者等が人的資本情報を重視する傾向が強まる中、企業側も女性活躍推進に関する具体的な数値目標を掲げ、労働環境の整備や意識改革を加速させていることが推察されます。
また、プラチナえるぼし取得企業では、通常のえるぼし認定で6位だった「銀行業」が首位となっており、特定の業界における積極的な取得が目立ちます。
プラチナえるぼし認定18社の主要な人的資本指標|「女性管理職比率」「育休取得率」などで全体平均を大きく上回る実績
女性活躍推進法に基づき、特に優良な取り組みを実施している企業が認定される「プラチナえるぼし」を取得した上場企業18社を対象に、人的資本経営の3つの主要指標(女性管理職比率、男性育休取得率、男女の賃金の差異)を抽出し、一覧表としてまとめました。
サービス業や金融業をはじめとした多様な業種において、各社がどのような水準で女性活躍やワークライフバランスの推進を実現しているのか、具体的な実績データをご確認いただけます。
プラチナえるぼし認定企業 人的指標一覧
| 証券コード | 企業名 | 東証33業種分類 | 管理職に占める 女性従業員の割合(%) |
男性の育児 休暇取得率(%) |
男女の賃金格差率(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2175 | エス・エム・エス | サービス業 | 43.2 | - | - |
| 2395 | 新日本科学 | サービス業 | 24.7 | 100 | 69.5 |
| 3064 | MonotaRO | 小売業 | 20.9 | 83 | 58 |
| 3696 | セレス | 情報・通信業 | 19 | 100 | 66.6 |
| 4343 | イオンファンタジー | サービス業 | 52.2 | 100 | 75.8 |
| 4926 | シーボン | 化学 | 85.9 | 50 | 71.2 |
| 6758 | ソニーグループ | 電気機器 | 20.5 | 84 | 82.8 |
| 7294 | ヨロズ | 輸送用機器 | 14.7 | 100 | 78.4 |
| 7381 | CCIグループ | 銀行業 | 22.1 | - | 56.3 |
| 8252 | 丸井グループ | 小売業 | 23.3 | 104.2 | 80.7 |
| 8331 | 千葉銀行 | 銀行業 | 19 | 97.6 | 53.6 |
| 8334 | 群馬銀行 | 銀行業 | 23.4 | 100 | 52.6 |
| 8381 | 山陰合同銀行 | 銀行業 | 25.5 | 103.2 | 54.1 |
| 8399 | 琉球銀行 | 銀行業 | 32.5 | 109.7 | 65.8 |
| 8416 | 高知銀行 | 銀行業 | 29.6 | 100 | 70.4 |
| 8424 | 芙蓉総合リース | その他金融業 | 23.1 | 104.1 | 61.7 |
| 8524 | 北洋銀行 | 銀行業 | 25.6 | 100 | 52.4 |
| 9560 | プログリット | サービス業 | 38.5 | 100 | - |
プラチナえるぼし認定企業18社を比較してみると、6社を銀行業が占めており、極めて高い男性育休取得率と安定した女性管理職比率を両立している点が特徴的です。
また、銀行業以外でも、管理職登用と「男女の賃金差異」の縮小の両面で実績を挙げている企業が存在しています。
上場企業全体および「えるぼし」認定企業平均との差
前述のプラチナえるぼし認定18社における各指標の平均値と、データが取得可能な「全上場企業の平均」、および「通常のえるぼし認定企業の平均」を比較しました。プラチナ認定企業が、他の上場企業と比較してどのような水準にあるのかが確認できます。
| 管理職に占める女性従業員の割合(%) | 男性の育児休暇取得率(%) | 男女の賃金格差率(%) | |
|---|---|---|---|
| プラチナえるぼし平均 | 30.21 | 95.99 | 65.62 |
| えるぼし平均 | 14.72 | 87.95 | 69.03 |
| 上場平均 | 12.72 | 77.13 | 69.06 |
上記のデータより、認定における評価指標の一つである女性管理職比率を見ると、全上場企業平均が12.72%であるのに対し、プラチナえるぼし認定企業平均は30.21%に達しており、全体を大幅に上回る実績を記録しています。
また、男性育休取得率でも、全上場企業平均(77.13%)や通常のえるぼし認定企業平均(87.95%)を超え、95.99%という極めて高い水準に位置しています。
一方で、男女の賃金の差異に関しては、プラチナえるぼし認定企業の平均値が65.62%となり、全体平均(69.06%)をやや下回る結果となっています。
企業情報データベースで実現する効率的な企業分析
今回は、当社が提供する「人的資本パッケージ」からプラチナえるぼし認定企業を抽出して調査を行いましたが、データソースである企業情報データベース「eol」をご活用いただくことで、業種別・企業別ランキングをはじめ、複数企業の経営指標等を効率的に収集することが可能です。
また、1961年以降の有価証券報告書を閲覧いただけるため、企業戦略の分析に不可欠な定性情報の収集も効率的に行えます。
「自社の業界での立ち位置を確認したい」「競合他社の人的資本データを比較したい」といった企業のご担当者様をはじめ、「学術研究や論文作成のために網羅的なデータを分析したい」という研究者・教育機関関係者の皆様まで、本記事以外のデータが必要な場合やご興味をお持ちでしたら、お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
※本記事で使用しているデータは当社独自の基準で算出しているため、各社の公表データと異なる場合があります。
投資判断に関する注意事項
※本記事は、企業情報データベースeolに収録されているデータに基づく情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券等の取引を推奨し、または勧誘するものではありません。投資判断は、必ずご自身の責任において行っていただくようお願いいたします。また、本記事に記載されている情報は、その正確性、完全性を保証するものではなく、投資の結果について当社は一切の責任を負いません。